連載でお伝えしてきたレアなワイン紹介も、最終回を迎えました。
最後は、もっとも著名なシャンパーニュ、「ドンペリ」について紹介します。
ドンペリは、ロマネ・コンティと並び称されるほどにレアで高級なワインとして知られています。
おそらくワインを飲んだことがない人でも、名前くらいは聞いたことがあるでしょう。
本記事では、ドンペリの特徴について詳しく解説します。
ドンペリの基本情報
生産者 | モエ・エ・シャンドン社 |
生産国・地域 | フランス・シャンパーニュ |
タイプ | 白・ロゼ・スパークリング |
価格 | 20,000円?300,000円以上 |
品種 | シャルドネ、ピノ・ノワール |
世界でもっとも高く評価されているシャンパーニュのひとつ。
欧州各国の皇室パーティーでも、たびたび登場し、とにかくハイグレードな存在として広く認知されています。
ちなみに生産者であるモエ・エ・シャンドン社は、やはりただものではありません。
同社は、1743年から脈々と続く老舗中のシャンパンメーカーです。
シャンパンメーカーとしてはもっとも強い影響力を持ち、170国以上でプロダクトを販売しています。
ドンペリの正式名称と意味
ドンペリの正式名称は、ドン・ペリニヨン(Dom Perignon)です。
ドンペリは、主に日本で見られる愛称ですね。
シャンパンの製造について多大なる功績を残した人物、ピエール・ペリニヨン(Pieere Perignon) から、名前を拝借しています。
「ドンペリヘネシー」と呼ばれることもありますが、これはあまりオフィシャルな名前ではありません。
ヘネシーとは、ドンペリを正規に輸入販売している「モエ・ヘネシー・ディアジオ」のことを指しています。
ただしドンペリの後ろに代理店の名前が来るのは、ネーミングとして不自然な状態。
どうやら、ラッパーたちが「ドンペリヘネシーのほうが韻を踏みやすいから」と考えて、都合よくヘネシーと呼んでいる様子です。
ドンペリの値段は、なぜ高いのか
先ほども触れましたが、もっとも高価なドン・ペリニヨン P3は、なんと1本30万円以上の価格で取引されています。
P3は、なんと25年以上にわたって熟成された、きわめて貴重なシャンパーニュ。
その手間を考えれば、30万円以上の価格がつけられるのも頷けるでしょう。
ただし、すべてのドンペリが驚くほどに高いわけではありません。
安いものであれば、1本20,000円足らずで購入可能です。
ナイトクラブなどであればもう少し高くなるでしょうが、決して手が届かない存在ではないでしょう。
グラスにサーブするのであれば、もっと現実的な価格になります。
ドンペリが高くなる理由はさまざまですが、やはりブランド力や品質といった面が挙げられるでしょう。
この点については、後ほど詳しく解説します。
ドンペリの味わいと種類
ドンペリの味わいは、ラインナップによってさまざまです。
ただし、基本的にはメイン的な位置付けである「ドン・ペリニヨン・ヴィンテージ」(白)がベースとなっていることは間違いありません。
ヴィンテージは、一言で言えば「奥深く、それでいてミステリアスだ」と言われています。
一方で、「味と香り、渋みと甘み、あらゆる面でバランスが優れている」とも評価されています。
好き嫌いが別れづらく、誰しも素晴らしい体験を得られることから、安定感と信頼感が感じられるのです。
さまざまなワイン哲学を有する人々が集うパーティーでドンペリが好まれるのもうなずけます。
そのほか、
- ヴィンテージ・ロゼ
- ドン・ペリニヨン P2
- ドン・ペリニヨン P3
- ドン・ペリニヨン エノテーク
などが存在します。
いずれもドンペリらしい風格とバランスのよさを兼ね備えており、欠点らしい欠点はほとんど見つかりません。
何を選んだとしても、高い期待値をさらに上回るでしょう。
なぜ、ドンペリはこれほどに有名なったのか
「ドンペリ」の名前は、おどろくほど世界中で知られています。
日本でも、たとえワインラバーでなくとも、「よくわからないけれど、とんでもなく高いワインである」というところまでは理解しているでしょう。
ドンペリがこれほどに認知されて有名になったには、やはりそれだけの理由がありました。
具体的には、以下のような6つの理由が挙げられるでしょう。
品質がよく、手間もかかっている
当たり前のことですが、やはりドンペリは品質で優位でした。
品質を高めるために、手間と工夫が相当にかけられています。
ドンペリは、実は毎年作られるものではありません。
ぶどうが一定以上のクオリティに育った年でしか、生産されないのです。
この時点で、ぶどうの出来不出来で納得行ってなくても、毎年生産に踏み切るワインと比較して品質が優れているとわかるでしょう。
そもそもクオリティが高いぶどうしか使わないスタンスは、「当たり外れを作らない」というところにもつながっています。
出てくれば確実に高品質であるため、ドンペリは「裏切らないシャンパーニュ」と呼ばれるに至りました。
さらに、ドンペリはかならず長期熟成されるシャンパンです。
ドンペリが市場に出てくるまでは、なんと最低でも8年間の熟成を行います。
この工程が入ることにより、ドンペリは熟達した味わいへ変貌するわけです。
また、長期熟成に耐えられるだけのワインを作っていること自体も、モエ社の素晴らしい功績と言えます。
プロモーションの成功
また、モエ社によるプロモーションが素晴らしいアプローチでした。
ちなみにF1レースやメジャーリーグで見かけられる祝勝会「シャンパン・ファイト」も、モエ社が作り出したムーブメントです。
当時は優勝したレーサーが、アンペリアルサイズよりも大きなドンペリのコルクを引き抜き、シャンパンファイトで狂喜乱舞しました。
メジャーリーグでは、優勝チームが何千本ほどのシャンパンを次々に開栓して振り回します。
この光景は世界中に放映されたため、ドンペリは最高の祝杯として認識されるようになります。
また、トップスターのアスリートたちが好んでいる(ように)見えたことから、高級路線も確率することにも成功しました。
ワインにとって、やはり品質は重要。
しかしそれ以上に、プロモーションの成否もポイントとなります。
そう考えれば、モエ社のプロモーションは大成功だったと言えるでしょう。
生産本数が多い
レアなワインでこそありますが、生産本数は多い部類に入ります。
厳密な本数は非公開ですが、おそらく年間で480万本ほど生産されていると予測できるようです。
年間に数千本しか生産できないシャンパーニュもあることを考えれば、この数字はずば抜けていると言えるでしょう。
要するに、もっともポピュラーなシャンパーニュはドンペリであるとも表現できるような状況です。
その品質を知らしめる機会が多くあったため、世界中で知られるようになりました。
メディアでの露出が多い
とにかくメディアでの露出が多かったのも特徴です。
名作スパイ映画007では、モエ社のワインが登場。
著名なラッパーも、歌詞に「ドンペリ・ヘネシー」の文言を入れている場合も。
HIP-HOPの世界でも、ドンペリは「成り上がりの証明」のような存在として扱われているのです。
日本にはアマテラスという著名なラッパーがいますが、彼もステージ上で「俺はラップで稼いで、ドンペリヘネシーを飲んでいるんだぞ」と言ったりしています。
また、著名な美術家との「共演」があるのも特徴。
バルーンアートにおける鬼才であるジェフ・クーンズのデザインを導入するなど、かなりトリッキーなコラボレーションも行っています。
ここまであらゆる面で露出を図るシャンパンも、珍しいものです。
ドンペリと言えば、ラグジュアリーなワインであると認識しているのは、こういった背景があるのです。
ナイトシーンにおける需要の強さ
日本においては、クラブやバーなどでの需要をきっかけに広まるワインは多々あります。
わかりやすいところで言えば、シャンパンが代表格だと言えるでしょう。
ドンペリも、同じくナイトシーンでの人気を集めました。
ナイトシーンでは「ドンペリをオーダーすること」自体にステイタスがあり、富裕層はドンペリを特別視するようになります。
また、スパークリングであることも有利でした。
ブランデーやコニャックは、基本的に一夜で飲み明かすものではありません。
しかしスパークリングであるドンペリは、一度栓が抜かれれば、早い段階で飲み切るものです。
つまりナイトクラブから見てドンペリの方が儲かりやすく、あちこちでラインナップされるようになりました。
というようにナイトクラブとの相性がよく、ドンペリは名前を馳せるようになったわけです。
おすすめできるドンペリはどれ?
もし何のドンペリを購入するか悩んでいるのであれば、「ドン・ペリニヨン2008年リミテッドエディション」がおすすめです。
ほのかに薫る柑橘系のフレーバーと、潤沢な果実味。
舌触りもよく、非常にスマートな飲み心地に仕上がっています。
スモーキーかつ妖艶な後味があり、アタックからフィニッシュまで完璧な出来栄えです。
値段は30,000円足らずと、やはり品質とブランド力を考えれば廉価だと言えます。
まずはこういった価格帯から、ドンペリの風格を体験してみましょう。
高いものを試すのは、それからでも決して遅くありません。
まとめ
ロマネ・コンティと並び称されるにふさわしい存在だと言えるでしょう。
一方で、ロマネ・コンティほど手に入れづらいワインでもありません。
安いものであれば、なんと20,000円以下の値段で購入可能です。
さすがにP3は躊躇してしまいそうですが、決して一生お目にかかれない値段でもありません。
最高級のレアワインでありながら、出会うチャンスは多分にあるはずです。
ワインラバーなら、ぜひともドンペリを楽しんでみましょう。
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